『きみは、ひみつがまもれるかい?』 その2の続き。
『きみは、ひみつがまもれるかい?』 その1はこちら。
「サーストンの三原則」に関してかなり掘り下げて書いているが、今回は原則2「繰り返し同じマジックを演じてはならない。」について。
(三原則の全文はについてはその1を参照。)
・原則2「繰り返し同じマジックを演じてはならない。」に例外はないということ
原則2を破るということは、同時に原則1をも破ることになる。起きる現象だけでなく、演技の流れまでも把握されるからだ。
その1で書いたように、「2度目の演技では観客は何が起こるかわかっているため、種を見破ることに集中して見ることができるから。」というのはその通りなんだけど、マジックによっては例外があると思い込んでるマジシャンが大勢いるらしい。
例えば、このブログのタイトルの由来ともなっている「Ambitious Card」(アンビシャス・カード)というカード・マジックがある。観客に選んでもらったカードを、カードの山の真ん中に入れても一番上に上がってきてしまう現象を起こす作品で、その現象が何度も繰り返されるマジックだ。
このアンビシャス・カードがあるために、原則2には例外があると思われているわけだ。
でもこれ、考え方が違うだろうと思う。アンビシャス・カードの場合、現象が同じように見えても、毎回、その原理というか方法を変えているためバレにくいということがまずいえる。
というよりも、アンビシャス・カードは何度も同じ現象が起きるという一つの作品(演技)であって、これを原則2に当てはめて考えるならば、やっぱり、今やったばかりの同じ作品(演技)を繰り返してはならないわけだ。(*1)
原則2「繰り返し同じマジックを演じてはならない。」に例外はない。
逆に考えるならば、繰り返してはならないのは演技であって現象ではないということになるから、アンビシャス・カードはまったく原則2に抵触していないわけだ。
・繰り返される現象
その2でご紹介した映像は見ていただけただろうか?あの映像の中で、マジシャンは2つの演技で結果的にはまったく同じ現象を起こしている。
それでも観客に気づかれないのは、原則1を守っていることもあるし、原則2も守り、同じ演技を繰り返しているわけではないからだ。(*2)
*1
- マジシャンが違えば、繰り返す回数も方法も違い、最後のオチでカードがサイフから出てきたり、別のカードと入れ替わりの変化を起こすなど、マジシャンそれぞれでオリジナルの手順を持っていたりして、それを特にそのマジシャンの「ACR (Ambitious Card Routine)」(アンビシャス・カード・ルーティン)と呼んだりする。
- 原則2に当てはめると、そのルーティンを繰り返して演じてはならないということだ。
*2
- 2つの演技の間に、別の現象を起こすマジックを演じている可能性もある。
- 2つの演技で同じ現象を起こしたあと、さらに次の演技でも同じというのは厳しいだろうと思う。多分、観客はグラスしか見ていない可能性がある。(逆にそれがミスディレクションになりそうだがw)
・実は崩壊している原則1と原則2
ここまで長々と原則1と原則2について書いてきたが、現代においては原則1も原則2も崩壊している。マジシャンの側からこの二つの原則を守るようアプローチできるのはライブの場合だけだ。
ビデオテープに録画ができるようになったときから崩壊は始まっているが、特に最近ではYouTubeなどのインターネット上の動画サイトで、気軽に何度でも同じ映像を繰り返し見ることができるようになった瞬間、完全に崩壊した。
前回ご紹介した動画も、もし1回目に見たときに気づかなかったとしても、2回目からは嫌でもその瞬間が目に入ってくるし、あのようなあからさまなトリックではなく、見た目上は完全には種がわからないマジックであっても色々と推測することは可能だ。(非マジシャンの当てずっぽうな推測が当たっていることも多々あるw)
しかも、マジックを見たときに種を推測することも、マジックの楽しみ方のひとつであることは否定できないため、それを止めることは誰にもできない。
・それでも守りたい、原則1と原則2
だからといって、ライブにおいても破っていいかというとそれは違うと思う。
もちろん、ライブであっても観客のマジックの見かた、楽しみ方を強制はできないが、種を推測するのも忘れるくらい魔法の時間にハマるという、マジック本来の見かた(と、個人的には思っている)を提供するためには大事なことであり、基本的な原則だ。
・その4に続く・・・
このテーマに関しては、次のエントリで最後とするつもりだけど、「その4」では「サーストンの三原則」における最後の砦、原則3「種明かしをしてはならない。」について考えてみる。
では、最後に個人的に理想とする魔法の時間、というか種なんかどうでもよくなるような楽しい演技を見せてくれる、Tommy Wonderの映像を。
[ Cups and Balls - Tommy Wonder ]