
ジェイミー・イアン・スイス(著)
角矢 幸繁(訳)
マジシャンであり、執筆家でもあるジェイミー・イアン・スイス(Jamy Ian Swiss)のオリジナル15作品が解説されている書籍だ。収録されているどの作品も高度なテクニックを要するものばかりで、とりあえず出来るようになった、という状態まで持っていくにも多くの時間がかかるかもしれない。
ただし、この本は難しいマジックが解説されているだけの本ではない。マジック研究家でもある著者のマジック理論や、マジックに対する考え、そもそもマジックとは何なのさ?というようなことが、エッセイの形でちりばめられている。正確にページ数は数えてないけど、全体の1/3くらいはマジックの解説ではなく”読み物”に割かれている感じ。
エッセイを読むと、妙にtheatricalな描写に苦笑する箇所もなくはないが、内容は非常に濃く、どんなマジシャンにもためになることが書かれている。
肝心なマジックのほうは、カード・マジックが9作品、コイン・マジックが4作品、スレッドを使用するマジックが1作品、そして、グラスのマジックが1作品。作品名がわかるように目次を紹介しておく。(太字が作品名、下線を引いたのがエッセイ。)
目次
謝辞
はじめに
本書について
武道としてのマジック
何故、マジックはくだらない見世物なのか?(Why magic Sucks)
カード・マジック
世界で2番目に難しいカードマジック(Stabbed in the Sandwich)
消えたエースの行方(The Vanishing Aces Revealed)
正直者のカード当て(Point Blank)
キス・オブ・ビックアップル(Kiss of Big Apple)
興味深いほど強烈なカードマジック(A Curiously Strong Card Trick)
カードに願いを(Wish Fulfillment)
仕掛けのいらない「見えないカード」(Gaffless Invisible Deck)
「虫の知らせ」決定版(Premonition Redux)
新しい「天井に貼り付くカード」(The Self Contained Card on Ceiling)
本当の秘密(Real Secrets)
コイン・マジック
仕掛けのいらない「ホッピング・ハーフ」(Hippity Cop)
手軽な「飛行するコイン」(Handy Coins Across)
卓上版イリュージョン(Well in Hand Okito)
ジャンボ・コインの扱い方(Direct Steal and Jumbo Coin Transformation)
レッスンと学習(Lesson and Learning)
アニメーテッド・リング
理論:“単純”なことですよ“簡単”ではないですがね(Theory : Simple not Easy)
使用する糸について(A basic thread primer)
照明の問題に光りを当ててみよう(Throwing some light on the Subject)
糸の持ち運びについてシンプリー・スイス(Gimmick : Simply Swiss)
アニメーテッド・リング(Animated Ring)
ザ・ソリッド・グラス
ザ・ソリッド・グラス(The Solid Glass)
謎の探求(The Search for Mystery)
訳者あとがき
この本を読んでから実際の著者の演技を見ると、理論を完璧に実践するのは本当に難しいんだな、ということに気付かされるが、自分の理想とするマジックをきっちり定義付けて、その理想に向かって努力していきたいと強く感じた。
まあ、理想や定義も時間とともに変化していくので、そういう意味でも本当に難しいのだが。
最後に、この本を読んで一番印象に残った一文を。著者がマジックを教える生徒に必ずする質問だそうだ。自分の胸にも突き刺さった一文。
p. 269
あなたがマジックを行うとき - いったい何をしているのですか?
「マジック」という言葉は、あなたにとって何を意味しているのですか?